研究・活動報告

智山伝法院では総合研究テーマに基づく研究会をはじめ、院内研究員によって構成される様々な研究会を開催しています。また、宗内外の各種研究会・シンポジウム等にも参加しています。
各研究会の紹介と、研究員の活動報告を掲載いたします。

研究会紹介

秘密事相研究会

当研究会では、江戸初期の事相の達匠である隆誉(1653-1711)を総合的に研究しています。隆誉の『諸大事十結』、その注釈『諸大事口決』を精読し、さらに『抜次第』『要法授決鈔』の読解に取り組んでいます。『抜次第』とは、もともと醍醐寺報恩院に代々伝わる次第の中から重要なものを抜き出し、隆誉がまとめたものです。その口決が『要法授決鈔』(布施猊下御重任記念として出版)です。醍醐・報恩院流の淵源を探り、現行『作法集』に大きな影響を与えた隆誉の諸文献を研究することによって、作法の源流と、事相・行法の精神を明らかにしていきます。

初期密教儀礼研究会

当研究会では、初期密教の重要経典の一つである『蘇悉地羯羅経』(Susiddhikara-mahātantra-sādhanopāyika-paṭala)についてチベット訳を中心に読解を行っています。具体的には、『蘇悉地羯羅経』のチベット訳として、ナルタン版・北京版・デルゲ版・チョーネ版・ラサ版・トクパレス版・河口慧海請来写本・シェルカル写本・プクタク写本・ウルガ版・ジャン版の11種類を参照しており、将来的にはチベット訳全体の校訂テキストおよび現代語訳の作成・出版を視野に活動を続けています。『蘇悉地羯羅経』は、『大日経』と深い関係を有するとされており、本経の検討を通じて真言宗に伝わる密教儀礼、事作法の本質について見究めてゆきたいと考えています。

新義真言教学研究会

当研究会は、単に新義派の加持身説と古義派の本地身説を論ずる教主義の問題だけにとどまらずに、多くの視点をもって真言宗の教学を総合的に研究し、その上で新義真言教学の特徴を明らかにすること目的としています。
また、新義・古義の教学研究者が一堂に会す「真言教学研究会」にも参画し、真言教学の問題点、教相と事相の関係、新義と古義の相違点などを視野に入れながら、発表・議論を重ねています。

仏教とジェンダー研究会

近年、ジェンダーをめぐる問題が盛んに取り上げられるようになりました。仏教学においても、これまで多くの研究者が仏典や仏教史における女性観を論じてきましたが、現代に生きる女性の問題として十分には展開してきませんでした。しかし昨今、寺院における女性のあり方について研究者や当事者たちによって学会や誌上で大きく議論されるようになってきました。
当研究会ではこうした動向のなかで、これからの寺院や宗派を担っていく女性および多様な性をもつ教師・寺族がより安心して生き生きと寺院活動を行っていけるよう、新たな伝統を創造することを目的としています。