令和6年度 企画展示「総本山智積院――修復の歴史」について
1.展示テーマ「総本山智積院――修復の歴史」
現在、宝物館に収められている国宝障壁画は、元は祥雲寺客殿を飾っていたもので、祥雲寺の拝領に伴い智積院へと引き継がれ、以後大切に保管されてきました。江戸期と昭和に発生した火災と明治期の盗難によりその多くを失うものの、現在でも絢爛豪華な姿を残しています。
障壁画はこれまでに数度、修復が施されています。昨今の例としては、平成の初期に桜図・楓図・松に黄蜀葵図・松に秋草図・雪松図が、そして令和三~五年にかけて松に立葵図の修復が行われています。また、現在でも松に梅図、宸殿三山の間を飾る違い棚壁貼付け、小襖の修復が行われています。松に立葵図に関しては、修復後初めて宝物館にて公開されましたが、修復にあたって行われた調査結果はまだ披露されていません。
修復に関しては障壁画のみではなく、智積院に残る資料の中にも修復の歴史を記したものがあります。智積院では数度、大規模に修復が行われています。寛政十、十一年(一七九八、九九)の二年にわたっては集議中により、安永四年(一七七五)には智積院第二十二世動潮僧正により、安永七年(一七七八)には動潮僧正の頃の鑑事である通明により、そして明治二十六年(一八九三)には智積院第四十四世佐伯隆基化主により修復が行われています。このような修復が定期的に行なわれていたことにより、智積院の資料は現在に至るまで残されてきました。
宝物館は収蔵品を適切な環境下にて保管することを基本理念の一つに挙げており、これはこれまで大切に残されてきた資料を次世代につなぐためでもあります。しかしながら、いくら適切な環境下にて保管していても経年による劣化は避けられないものであり、現在でも資料の破損状況を確認しながら順次、修復を施し展示・保管しています。
今回の展示では、この『修復』と言うものに視点をあて、これまで智積院内で行われてきた修復の歴史を概観するよう構成しています。上記に示したそれぞれ大規模修復の記載が残る資料の他、その状態により適宜、修復が施されてきたことが分かる資料を展示します。また、松に立葵図の旧四分一や下地など、修復にあたって取り外された旧部材の展示を行うとともに、松に立葵図の修復に伴い行われた調査の結果も展示グラフィックなどを使用して紹介します。
2.展示期間・展示資料
※長谷川等伯一門による国宝障壁画については常設展示いたします。
※令和6年度(2024)は資料をA群、B群に分けて交互に展示いたします。
①令和6年(2024)5月1日~令和6年(2024)7月30日
【A群】
「遊智積記」(延宝七年(1679))、表紙緞子表装牙軸
「智積院靈寶并袈裟世具目録 上」(江戸時代)
「太元大曼荼羅」(江戸時代)、絹本着色絹表装木軸
「千手観音像」(江戸時代)、絹本着色絹表装金軸
「普賢延命像」(江戸時代)、絹本着色緞子表装木軸
「額字」(江戸時代)、紙本墨書紙表装木軸
「不動明王図」(室町時代)、絹本着色絹表装木軸
【通年】
「松に立葵図 旧四分一」
「松に立葵図 旧裏打ち」
②令和6年(2024)8月1日~令和6年(2024)10月30日
【B群】
「十如是」(江戸時代)、表紙緞子表装
「智積院法具世具目録 下」(江戸時代)
「星曼荼羅」(江戸時代)、絹本着色桐紋入描表装金軸
「第十世専戒僧正像」(江戸時代 宝永七年(1710))、絹本着色描表装金軸
「出山釈迦図」(江戸時代)、紙本着色絹金襴表装
「地蔵尊像」(南北朝時代)、絹本着色絹表装金軸
「家綱公書」(江戸時代)、紙本墨書絹表装牙軸
【通年】
「松に立葵図 旧四分一」
「松に立葵図 旧裏打ち」
③令和6年(2024)11月1日~令和7年(2025)1月30日
【A群】
「遊智積記」(延宝七年(1679))、表紙緞子表装牙軸
「智積院靈寶并袈裟世具目録 上」(江戸時代)
「太元大曼荼羅」(江戸時代)、絹本着色絹表装木軸
「千手観音像」(江戸時代)、絹本着色絹表装金軸
「普賢延命像」(江戸時代)、絹本着色緞子表装木軸
「額字」(江戸時代)、紙本墨書紙表装木軸
「不動明王図」(室町時代)、絹本着色絹表装木軸
【通年】
「松に立葵図 旧四分一」
「松に立葵図 旧裏打ち」
④令和7年(2025)2月1日~令和7年(2025)4月29日
【B群】
「十如是」(江戸時代)、表紙緞子表装
「智積院法具世具目録 下」(江戸時代)
「星曼荼羅」(江戸時代)、絹本着色桐紋入描表装金軸
「第十世専戒僧正像」(江戸時代 宝永七年(1710))、絹本着色描表装金軸
「出山釈迦図」(江戸時代)、紙本着色絹金襴表装
「地蔵尊像」(南北朝時代)、絹本着色絹表装金軸
「家綱公書」(江戸時代)、紙本墨書絹表装牙軸
【通年】
「松に立葵図 旧四分一」
「松に立葵図 旧裏打ち」