第10回写真コンテスト結果発表
「第10回智積院写真コンテスト」に多数のご応募をいただきましてありがとうございました。
厳正なる審査の結果、以下の方々が入選されました。
特別審査員の中田 昭 氏(日本写真家協会会員)、村中 修 氏(ビジュアルアーツ専門学校前校長)の選評と併せてご覧ください。
総評
近年は天候不順などによって花々の色づきなども変則で、撮影時期などで悩まれた方も多かったと思います。そんな条件の中でも境内で見られるフォジェニックな光景を熱心に探しながら撮影された多くの秀作に感心しました。(中田昭)
今回の入選作品に感じたのは、撮影者が感じられた「光」でした。フォトグラフィは「光で描く」つまり「光画」というべきものだと再認識しました。また柴灯護摩の一場面や作務中のお坊様などを捉えたスナップも写真ならではの表現として優れたものがありました。(村中修)
入選作品
最優秀賞
岡本紳吾「新緑を駆け抜ける」
鍵型に伸びた参道が目をひき、赤い衣装の子供さんのブレた姿が画面に動きを与えています。全体にソフトな雰囲気が心地よく、作者の力量を感じました。(中田)
幼い子供が新緑の中をかけていく、可愛らしさと共に生命力にあふれた作品です。明るめの露出設定で淡い色彩ですが、緑の中に子供のオレンジ色のシャツが映えます。スローシャッターによるブレが動感を与え、幻想的な作品となりました。(村中)
優秀賞
石川毅「紅い冬至日」
ライトアップされた紅葉から、深まりゆく秋の情景が伝わってきます。撮影された薄暮の時間帯も良かったと思います。
幹の分かれ目にライトを置いたのが効果的でした。(中田)
黄昏時にライトアップされた紅葉と残照で淡く背景が見えるベストなタイミングで撮られています、木の背後にあるライトの光条も効果的で、光を巧みに使われ成功されています。(村中)
優秀賞
畑野恵「色とりどりの智積院」
色鮮やかに咲く紫陽花をタテイチに入れ、フレアーを利用してソフト
表現したことで、梅雨の時期の情景が優しく表現されています。(中田)
色調整をされているのか、全体的に青みがかった色彩が印象的な作品です。逆光での白っぽいフレアも、初夏の光を表現する効果となっています。画面がやや傾いているのも動感を与えてくれました。(村中)
奨励賞
松田美輝子「照紅葉と光り輝くひと」
短冊形の縦位置写真で、上部の色鮮やかな紅葉が効果的です。
青空と朝の力強い光線、大胆に入れた枝の形など、トリミングでかなり工夫された作品かと思いました。(中田)
紅葉の作品ですが、掃除をするお坊様を主役にしています。四人のお坊様がそれぞれ違う動きをされている瞬間を捉えて良いスナップになりました。上下の紅葉で囲まれた額縁構図も良かったです。(村中)
奨励賞
フネカワフネオ「冬の星空」
星の軌跡と空のトーン、屋根のシルエット。その中に浮かぶ京都
タワーの姿、点滅する赤色ライトが特に効果的でした。作者の構成力
を発揮した作品となりました。(中田)
境内から見える京の夜空に長時間露光で星の軌跡を描き、壮大な宇宙を感じさせる作品となりました。星の軌跡と対角に入った人工衛星の軌跡も良く、京都タワーと瓦屋根の対比も歴史を感じさせてくれます。(村中)
奨励賞
松村咲来「平和」
鐘楼を真正面から撮影したことで、平和を祈る力強い願いが
伝わってきました。木々に囲まれて、視線が中央の鐘に引き寄せられ
る構図も効果的でした。(中田)
ローアングルとワイドレンズ、シンメトリーな構図で堂々とした鐘楼になりました。光に映える新緑とその向こうに抜ける青空も季節感と開放感を与えてくれています。前景としての緑が作り出す額縁構図でまとまりました。(村中)
佳作
嶋崎健之「天に向かって」
ローアングルから弓を弾く修験者の姿を中央に力強く捉えたが、
右側の見学者をトリミングするとさらに画面に迫力が出たと思い
ます。(中田)
柴燈護摩で六方に矢を放つ緊張感ある一コマを見事に捉えられています。このような撮影ではどこから撮るかという撮影位置が大切ですが、背景に金堂が見えるベストポジションを選ばれました。(村中)
佳作
服部敏也「静という音」
大書院から見る庭園に雪が降り、その厳冬の様子を音のない世界
に例えた。上部にある屋根の面積を削り横長に広々と撮影するとさらに静けさが強調されたと思いました。(中田)
雪の降りしきる利休好みの庭を静謐なイメージで捉えられています。静止した雪が印象的です。手前のつくばい、築山に続く石橋を前景にして奥書院へと視点が誘われ、奥行きのある画面構成になっています。(村中)
佳作
井上信治「願いが叶いますように」
タイトル通りに、宙に浮いた護摩木にタイミングよくピントが合い、願いがかなった気持ちが伝わってきました。左側をトリミングするとさらに画面が引き締まると思います。(中田)
護摩木が護摩壇に投げ込まれる瞬間を見事に捉えられています。炎の中にお不動様が見えると言われる柴燈護摩ですが炎も良い形です。護摩壇の熱気を感じるような臨場感ある作品です。(村中)
入選作品の展示は、令和7年4月中旬から令和8年3月下旬まで
総本山智積院 大書院 鞘の間(リンク先、左中央5番)で展示いたします。
入選作品のほか、全応募作品をデジタルサイネージにてスライド展示いたします。
尚、令和7年4月1日から「第11回智積院写真コンテスト」を開催しております。
たくさんのご応募お待ちしております。