第8回智積院写真コンテスト結果発表

「第8回智積院写真コンテスト」に多数のご応募をいただきましてありがとうございました。
厳正なる審査の結果、以下の方々が入選されました。
特別審査員の中田 昭 氏(日本写真家協会会員)、村中 修 氏(ビジュアルアーツ専門学校前校長)の選評と併せてご覧ください。

総評

今回は、応募期間中に雪の降った日も多かったので、皆さんの作品作りに弾みがついたように思いました。そして応募作品には、早朝の空気感や季節感を活かし、お勤めや作務をする僧侶の姿を生き生きと捉らえた作品も多く、工夫を重ねて撮影されたどの作品からも力強いメッセージが感じられました。コロナ禍が収束に向かう中、追い風となって次回も多くの作品が応募されることを願っています。(中田昭)

昨年には弘法大師様ご生誕1250年記念法要が催行された事もあり、お坊様を始めとする人物を取り入れた作品が多く寄せられました。良い写真とはその写真から様々な感情や思いがわき起こる写真とだ思いますが、人物が入ることによって感情移入がしやすくなり、写っていること以上の広がりが産まれます。もちろん情景だけの作品も同じとえます。今回の選考ではその写真から広がる世界を感じられる作品を選びました。(村中修)

入選作品

最優秀賞


piroparo8703「朝陽に向かって」

雪の降った早朝、金堂へ向かう僧侶の後ろ姿。青空の色調も活かしながら雪化粧した木々の枝を照らす朝日を力強く画面に入れ、歩んだ足の下駄裏が見えた瞬間を捉えて動感を出すなど、画面作りの上手さが評価されました。(中田)

京都に珍しく大雪が降った日の早朝、ご本山の美しい雪景色を見事に捉えられています。朝日の光芒と逆光に映える枝の雪が美しく、金堂に向かって歩く僧侶が点景となって画面を引き締めご凛とした冬の空気を感じる素晴らしい作品です。(村中)

優秀賞


unknown knowns「静寂閑雅」

静寂な空気に包まれながら、金堂の真正面から進んでくる若い僧の姿。やや低目の真正面からカメラを構えたので、場の緊張感をさらに伝えることができた。作者は、撮影しながらどのタイミングで道をあけるか、見計らっていたのではないでしょうか?(中田)

四季それぞれの表情を見せる境内で新緑を捉えた素晴らしい作品です。左右対称の構図に樹木の美しい緑が効果的に配置され、その中を歩む僧侶が静けさの中にも動感を感じさせます。左右の垣根に咲く桔梗も季節の彩りを添えてくれました。(村中)

優秀賞


金澤 玄「雪朝のお勤め」

こちらも雪の降り止んだ早朝の寺内風景ですが、明けて間もない空の色彩が、僧侶の衣の色と画面に相乗効果を生みました。。回廊の欄干や屋根先の風鐸なども造形的に活かされています。(中田)

こちらも雪の日の早朝、金堂での勤行を終えた僧侶が明王殿に向かう情景を雪景色の中に捉えられています。凍てついた参道やつららが厳寒の朝を感じさせますが、西の空に見える仄かに赤い彩雲と僧侶の着物が彩りを添えています。(村中)

特別賞


井村智子「智積院幻月」

夏の終わり頃(?)の明王殿と蓮池が夜間照明で照らされた造形的な作品。空には幻月と名付けられた不思議な色彩の月が画面のポイントとなって目に飛び込んでくる。(中田)

夜間は昼間とは異なる非日常的で幻想的な世界を見ることができます。この作品においても中央奥の街灯と金堂からの光のカクテルライトで印象的な表情を見せる明王殿と蓮が空に掛かる月ともあいまって神秘的で幻想的な風景となりました。(村中)

奨励賞

おもゆみ「絨毯のおそうじ」

晩秋の朝、散り紅葉を掃く若い僧侶に照らす光が美しい。秋麗と呼ぶに相応しいような情景が素直なカメラアイで捉えられた作品で、箒を持った動作もポイントになっています。(中田)

智積院の紅葉は美しいですが、散り積もった紅葉を掃除される作務は大変なお仕事です。その姿を午後の日射しのなかで的確にスナップされています。反逆光に紅葉が映え、また木々の影、作務のお坊様がシルエット気味になったのも画面に深みを与えています。(村中)

奨励賞


齋藤三和「水無月」

画面のほぼ半分に紫陽花を大胆に入れ、石段を上る二人の舞妓さんの歩む姿も美しく初夏の情緒が醸し出された。合わせるピント位置とボケで主題を浮き立たせるテクニックが生かされています。(中田)

青葉祭りの日でしょうか。紫陽花をメインに背景に大師堂への階段を上る舞子さんの後ろ姿を配し、階段の両側には南無大師遍昭金剛の幟旗。多くの要素を的確な配置でまとめられています。思い切ってピントを手前の紫陽花に合わせ、背景を適度にぼかされたことも効果的でした。(村中)

奨励賞


saori tanaka「雪の化身が舞い降りた」

雪の朝、奇跡のような情景にカメラを向け、冷静に捉えることができた作品。望遠ズームで屋根に立ったサギの姿を真正面に入れ、背景の雲のトーンやストロボ発光で降る雪も表現されています。(中田)

降りしきる雪の中、屋根にとまる白鷺。屋根と軒先が作る三角形が不思議な調和を見せる和モダンな作品です。なかなか無い情景を見事に捉えられています。逆光気味であったことも雪の質感や羽毛のディティールを際立たせてくれました。(村中)

佳作


古谷宗信「陽照雪景」

雪が降りやみ、射してきた朝日が柱の影を引いて、書院空間の広がりに立体感を生みました。庭に積もった雪の量も最適で、端正な画面構成をした作者の美意識を感じさせられました。(中田)

大書院の中から雪の庭を見る。撮り方としては定番的なカットではありますが、朝日が差し込んだ一瞬を逃されませんでした。柱の陰、手前の暗がりからの光のグラデーションが美し、く畳の美しさを再認識させてくれました。(村中)

入選作品の展示は、令和5年4月中旬から令和6年3月下旬まで
総本山智積院 大書院 鞘の間(リンク先、左中央5番)で展示いたします。
入選作品のほか、全応募作品をデジタルフォトフレームにてスライド展示いたします(2023年7月24日現在、デジタルフォトフレーム故障のため、展示を中止しております。ご了承ください)

尚、令和5年3月1日から「第9回智積院写真コンテスト」を開催しております。
たくさんのご応募お待ちしております。

第9回智積院写真コンテスト応募要項